ファストファッションに対する批判の声は年々広がっていますが、大手のファストファッション企業も数々の取り組みを打ち出してきています。
今回はファストファッションの代表格であるユニクロの取り組みを肯定的な意見と批判的な意見に分けてご紹介し、ファストファッションにおける社会問題への取り組みの現在地を解説していきます。
1. ユニクロのエシカルファッションとは何か?その理念と目標
エシカルファッションとは、環境や社会に配慮した服づくりや服の販売を行うことを指します。エシカルファッションは、ファストファッションの反動として、近年注目されている概念です。
ユニクロは、エシカルファッションの先駆者として、自社の理念と目標を「服のチカラを、社会のチカラに。」という言葉で表現しています。ユニクロは、「よい服をつくり、よい服を売ることで、世界をよい方向へ変えていくことができる」と信じており、そのために以下の3つのことを実践しています。
- よい服とは、シンプルで、上質で、長く使える性能を持ち、あらゆる人の暮らしを豊かにできる服。
- 自然との共生を考え、つくられる過程で、革新的な技術を使い、地球に余計な負荷をかけない服。
- 健康と安全と人権がきちんと守られた環境で、いきいきと働く多様な人々の手でつくり届けられる服。
ユニクロは、これらのよい服を通して、社会の持続的な発展に寄与できるよう、新たな基準をつくり、不断の努力をもって進めていくことを約束しています。
2. ユニクロが行っているエシカルな取り組みの内容と成果
2-1. 環境負荷の低減
ユニクロは、環境分野における5つの注力領域(気候変動への対応、エネルギー効率の向上、水資源の管理、廃棄物削減と資源効率の向上、化学物質管理)で環境負荷の低減を進めています。また、責任ある原材料調達とサステナブルな商品開発も行っています。
2-1-1. サステナブルな素材や技術の使用
ユニクロは、「RE.UNIQLO」という取り組みを通して、全商品をリサイクルやリユースすることを目指しています。その第一歩がダウンリサイクルです。着られなくなったユニクロのダウン商品を回収し、ダウンとフェザーの100%リサイクルした新しいダウン商品に生まれ変わらせています。今後はほかの製品でも服から服へのリサイクルを広げていく予定です。
また、水の使用量を従来に比べ最大99%削減(仕上げ加工時)した「BLUE CYCLE JEANS」など、よりサステナブルなジーンズを作る取り組みも進めています。さらに、飲み終わったペットボトルから糸を生産し、新しい服をつくる「DRY-EX」や「AIRism」などの商品も展開しています。
2-1-2. 温室効果ガス排出量の削減
- 店舗のLED導入率93.8%を達成し、温室効果ガス排出量を38.7%削減(2013年度実績比、単位面積あたり)
- 台湾の3店舗に太陽光パネルの設置を完了し、今後も積極的に導入
- サプライチェーンにおけるエネルギー消費量や温室効果ガス排出量の把握と削減
- 商品使用時の洗濯や乾燥による温室効果ガス排出量の低減を促す「洗濯マーク」の表示
2-1-3. 水資源や廃棄物の管理
ユニクロは、水資源や廃棄物の管理にも配慮しています。水資源については、以下のような取り組みを行っています。
- サプライチェーンにおける水消費量や水質汚染物質の把握と削減
- 水不足地域での水資源保全活動への協力
- 水洗い不要で清潔さを保つ「ウォッシャブルニット」や「ウォッシャブルセーター」などの商品開発
廃棄物については、以下のような取り組みを行っています。
- サプライチェーンにおける廃棄物発生量やリサイクル率の把握と削減
- プラスチック製ショッピングバッグやレジ袋の有料化や廃止
- ペーパーレス化や再生紙使用率向上などのオフィス活動
2-2. 社会貢献の推進
ユニクロは、社会貢献分野における3つの注力領域(難民支援・自立支援、次世代教育支援、災害支援)で社会貢献活動を推進しています。また、SDGsへの貢献も行っています。
2-2-1. 取引先工場の人権や労働環境の尊重
ユニクロは、服づくりに関わる人々がやりがいをもって働けることが良い服に欠かせないと
考えており、取引先工場の人権や労働環境の尊重にも力を入れています。具体的には、以下のような取り組みを行っています。
- 取引先工場のモニタリングと調査
- ファーストリテイリンググループの人権方針の策定と周知
- 取引先工場の従業員が職場の問題を当社に直接相談できるホットラインの設置
- 取引先工場の従業員に対する教育やキャリア支援
2-2-2. 難民支援や次世代教育支援などの社会貢献活動
ユニクロは、服を通じて社会に貢献することを使命としており、難民支援や次世代教育支援などの社会貢献活動を行っています。
難民支援については、2006年から国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協力し、不要になったユニクロの服を回収し、服を必要としている難民に届ける「服のリサイクル活動」を行っています。また、難民キャンプで働くスタッフや難民自身に対する教育や自立支援も行っています。
次世代教育支援については、日本全国の学校で展開する「届けよう!服のチカラ」という出張授業や、東日本大震災で被災した子どもたちへの長期的な支援などを行っています。また、世界各地で展開する「UNIQLO FELLOWSHIP PROGRAM」では、優秀な学生に奨学金やインターンシップを提供し、将来のリーダー育成に貢献しています。
3. ユニクロがエシカルファッションに取り組む理由と今後の展望
ユニクロがエシカルファッションに取り組む理由は、創業者である柳井正氏が「服づくりは人づくり」という考え方を持っているからです。柳井氏は、「服づくりは人づくり」という言葉で、「服づくりに関わるすべての人々が幸せになれるようにしたい」という思いを表現しています。そのため、ユニクロは、自社だけでなく、サプライチェーンや地域社会にも配慮したエシカルファッションを推進しています。
ユニクロは今後も、「服のチカラを、社会のチカラに。」という理念のもと、エシカルファッションに取り組んでいきます。そのために、以下のようなことを目指しています。
- 服のリサイクルやリユースをさらに進め、全商品を服から服へのリサイクルにする
- 温室効果ガス排出量を削減し、2050年までにネットゼロエミッションを達成する
- 取引先工場の人権や労働環境の改善を支援し、従業員の幸福度や生産性を高める
- 難民や被災者、次世代のリーダーなど、社会に貢献できる人々を支援する
4. まとめ
ユニクロは、エシカルファッションの先駆者として、自社の理念と目標を「服のチカラを、社会のチカラに。」という言葉で表現しています。ユニクロは、「よい服をつくり、よい服を売ることで、世界をよい方向へ変えていくことができる」と信じており、そのために環境負荷の低減や社会貢献の推進などのエシカルな取り組みを行っています。ユニクロは今後も、「服づくりは人づくり」という考え方から、「服のチカラ」で社会に貢献できるよう、エシカルファッションに取り組んでいきます。