ファッション業界は、環境問題や気候変動に対する消費者の意識の高まりに応えるために、サステナブルな商品や取り組みを増やしています。しかし、その中には実際にはエコでないのに環境に配慮しているように装う「グリーンウォッシュ」と呼ばれる行為を行っているものもあります。グリーンウォッシュは、消費者を騙すだけでなく、環境問題や気候変動への対策を遅らせることにもつながります。では、ファッション業界でのグリーンウォッシュとはどのようなもので、どうやって見抜くことができるのでしょうか。この記事では、グリーンウォッシュの定義と歴史、ファッション業界でのグリーンウォッシュの例と問題点、グリーンウォッシュを見抜く方法とサステナブルなファッションを選ぶためのコツについて解説します。
目次
- グリーンウォッシュとは何か
-
ファッション業界でのグリーンウォッシュの例
- グリーンウォッシュの問題点と影響
- 3.1 消費者を騙すことで環境問題や気候変動への対策を遅らせること
- 3.2ブランドイメージや信頼性に悪影響を及ぼすこと
- 3.3 サステナブルなファッションを求める消費者のニーズに応えられないこと
- 3.4 消費者の目をより大きな問題からそらすケース
- グリーンウォッシュを見抜く方法
- サステナブルなファッションを実践する方法
- 5.1 購入前に必要性や着回し性を考えること
- 5.2 購入後に服の手入れや修理をすること
- 5.3 購入しないでレンタルやシェアを利用すること
- 5.4 購入した服を手放すときはリユースやリサイクルをすること
- まとめ
1. グリーンウォッシュとは何か
グリーンウォッシュとは、実際にはエコでないのに環境に配慮しているように装う企業などの行動のことです1。この言葉は1986年に環境活動家のジェイ・ウェスターベルトが造語したもので、ホテルがタオルやベッドシーツを再利用するように客に促すことで水や洗剤を節約するというキャンペーンを批判した際に使われました。その後、環境問題や気候変動が社会的な関心事となるにつれて、多くの企業が自社の商品やサービスを「サステナブル」や「エコフレンドリー」という言葉で宣伝するようになりましたが、その中には実態と乖離した主張や誇大広告を行っているものもありました。これらの行為はグリーンウォッシュと呼ばれるようになりました。
グリーンウォッシュにはさまざまな種類や特徴がありますが、一般的に以下のようなものが挙げられます。
- 誤解を招くような表現や用語を使って、商品やサービスが環境に与える影響をぼかすこと
- 環境基準や認証制度を満たしていないか不明確な商品やサービスを、環境に優しいという印象を与えるラベルやロゴで飾ること
- 環境に対する取り組みや貢献を実際よりも大きく見せること
- 環境に対する取り組みや貢献を行っていることを強調する一方で、環境に悪影響を及ぼす商品やサービスの生産や販売を続けること
- 環境に対する取り組みや貢献を行っていることを強調する一方で、社会的な責任や倫理に欠ける行動を行うこと
2. ファッション業界でのグリーンウォッシュの例
ファッション業界は、環境問題や気候変動に大きな責任がある業界の一つです。ファッション業界は、世界の温室効果ガス排出量の2～8％、水資源の消費量の20％、廃棄物の発生量の4％など、多くの環境負荷を生み出しています。また、ファッション業界は、劣悪な労働条件や人権侵害、動物虐待など、社会的な問題も抱えています。このような背景から、ファッション業界では、持続可能であることがトレンドになっており、多くのブランドがエコ商品を売り出していますが、その中にはグリーンウォッシュを行っているものもあります。以下では、ファッション業界でのグリーンウォッシュの例をいくつか紹介します。
2.1 レーヨン素材をバンブー素材と偽るケース
レーヨンは、木材パルプから作られる人工繊維で、バンブーはその原料の一つです。バンブーは速く成長し、農薬や化学肥料を必要としないため、エコ素材として人気があります。しかし、バンブーからレーヨンを作る過程では、多くの水や化学薬品が使われます。また、レーヨンは生分解性が低く、廃棄時に微塑性物質を発生させます。そのため、レーヨンは環境に優しい素材とは言えません。しかし、一部のブランドはレーヨン素材の商品をバンブー素材と偽って販売したり、「バンブー・レーヨン」や「バンブー・ビスコース」という名称で消費者に誤解を与えたりしています。
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2.2 水や環境負荷を軽減することに無関心なのに一部の商品だけエコだと宣伝するケース
ジーンズはファッション業界で最も人気がありますが、その製造過程では大量の水や化学薬品が使われます。そのため、ジーンズの生産による環境への影響は非常に大きいと言われています。この問題に対応するために、一部のブランドは水やエネルギーを節約する技術を導入したり、リサイクル素材を使用したりしています。しかし、これらの取り組みは一部の商品やコレクションに限られており、全体的な生産や販売には影響を与えていません。また、水やエネルギーを節約する技術も、実際には効果が低いか、逆に環境負荷を増やす可能性があります。
例えば、リーバイスは2011年から「ウォーターレス・ジーンズ」という商品を販売しています。これは、仕上げ工程で使用する水の量を28～95％削減したというものです。しかし、この商品はリーバイスの全商品のうちわずか4％しか占めておらず、ジーンズの生産における水の使用量は仕上げ工程だけでなく、綿栽培や染色など他の工程でも発生します。また、ウォーターレス・ジーンズでは、水を節約する代わりに乾燥機や化学薬品を多用しており、これらはエネルギーや排出物など別の環境問題を引き起こす可能性があります。
3. グリーンウォッシュの問題点と影響
グリーンウォッシュは、消費者や社会に対して様々な問題点と影響をもたらします。以下では、グリーンウォッシュが引き起こす主な問題点と影響について説明します。
3.1 消費者を騙すことで環境問題や気候変動への対策を遅らせること
グリーンウォッシュは、消費者が自分の購買行動が環境に与える影響を正しく理解できないようにします。消費者は、グリーンウォッシュされた商品やサービスが本当に環境に優しいかどうかを判断することが難しくなります。また、グリーンウォッシュされた商品やサービスを購入することで、自分は環境問題や気候変動に対して貢献しているという錯覚に陥ります。これは、消費者が自分の購買行動を見直したり、より効果的な環境対策を求めたりすることを阻害します。つまり、グリーンウォッシュは、消費者の環境意識や行動を低下させることで、環境問題や気候変動への対策を遅らせることになります。
3.2 ブランドイメージや信頼性に悪影響を及ぼすこと
グリーンウォッシュは、ブランドのイメージや信頼性にも悪影響を及ぼします。消費者は、グリーンウォッシュされた商品やサービスに失望したり、騙されたと感じたりすることがあります。これは、消費者のブランドへの忠誠心や満足度を低下させることになります。また、グリーンウォッシュは、消費者やメディアからの批判や告発を招くことがあります。これは、ブランドの評判や信頼性を損なうことになります。さらに、グリーンウォッシュは、規制当局や競争相手からの訴訟や罰金を引き起こすことがあります。これは、ブランドの経済的な損失や法的なリスクを増加させることになります。
3.3 サステナブルなファッションを求める消費者のニーズに応えられないこと
グリーンウォッシュは、サステナブルなファッションを求める消費者のニーズに応えられないことにもつながります。消費者は、環境問題や気候変動に対する関心が高まるにつれて、ファッション業界に対してもより高い水準の環境配慮や社会的責任を求めるようになっています。消費者は、ファッション業界が自分の商品やサービスが環境に与える影響を測定し、公開し、改善することを望んでいます。また、消費者は、ファッション業界が自分の商品やサービスが持つ環境的価値や社会的価値を明確に伝えることを望んでいます。しかし、グリーンウォッシュされた商品やサービスは、これらのニーズに応えることができません。
3.4 消費者の目をより大きな問題からそらすケース
グリーンウォッシュは、消費者の目をより大きな問題からそらすこともあります。例えば、ファッション業界は、過剰生産や過剰消費という根本的な問題を抱えています。ファッション業界は、年間約1億5000万トンの衣料品を生産し、そのうち約3分の1が販売される前に廃棄されます。また、ファッション業界は、年間約4000億ドル相当の未使用の衣料品を廃棄し、そのうち約85％が埋め立てや焼却によって処分されます。このような過剰生産や過剰消費は、環境に対する大きな負荷となっています。しかし、一部のブランドは、自分たちの商品やサービスが環境に優しいという主張やキャンペーンを展開することで、消費者に対してこの問題を無視させたり、軽視させたりすることがあります。
例えば、H&Mは2013年から「ガーメント・コレクティング」という取り組みを行っています。これは、消費者が不要になった衣料品をH&Mの店舗に持ち込むと、引き換えに割引券をもらえるというものです。H&Mは、この取り組みで集めた衣料品をリサイクルや再利用することで、環境に対する貢献をアピールしています。しかし、この取り組みは、消費者に対して新しい衣料品を購入するインセンティブを与えることで、過剰消費を助長する可能性があります。また、H&Mはこの取り組みで集めた衣料品のうちわずか0.7％しかリサイクルしておらず、残りの衣料品は他の企業に売却したり、廃棄したりしています。
4. グリーンウォッシュを見抜く方法
グリーンウォッシュは、消費者や社会に対して様々な問題点と影響をもたらしますが、グリーンウォッシュを見抜くことは決して簡単ではありません。しかし、以下のような方法でグリーンウォッシュを見抜くことができるかもしれません。
4.1 商品がどうエコであるか具体的に分かる説明書を読むこと
グリーンウォッシュされた商品やサービスは、環境に関する具体的な情報やデータを提供しないことが多いです。その代わりに、「エコフレンドリー」や「サステナブル」といった曖昧な言葉や用語を使って、消費者に対して環境に優しいという印象を与えます。しかし、これらの言葉や用語は、定義や基準が明確でないことが多く、実際には何を意味しているのか分かりません。そのため、消費者は、商品がどうエコであるか具体的に分かる説明書を読むことが重要です。例えば、商品の素材や原産地、製造過程や廃棄方法などについての詳細な情報やデータを提供しているかどうかを確認することです。また、商品についての環境影響評価やライフサイクル分析などの科学的な根拠や証拠を提供しているかどうかも確認することです。
4.2 信用ある第三者機関から認定を受けた商品を選ぶこと
グリーンウォッシュされた商品やサービスは、自社の環境基準や認証制度を作って、消費者に対して環境に優しいという印象を与えることがあります。しかし、これらの環境基準や認証制度は、実際には厳格でないか、信頼性が低いことが多いです。そのため、消費者は、信用ある第三者機関から認定を受けた商品を選ぶことが重要です。例えば、オーガニックコットンやリサイクルポリエステルなどの環境に優しい素材を使用していることを証明するグローバルオーガニックテキスタイルスタンダード（GOTS）やグローバルリサイクルスタンダード（GRS）などの認証制度があります。また、環境的かつ社会的に責任があると認定された企業から購入することもできます。例えば、ファッション業界で最も信頼されているサステナビリティ指標であるファッション・トランスパレンシー・インデックスで高い評価を得ている企業があります。
4.3 グリーンウォッシュについて学ぶこと
グリーンウォッシュを見抜くためには、グリーンウォッシュについて学ぶことも重要です。グリーンウォッシュは、消費者だけでなく、メディアや専門家なども騙すことがあります。そのため、消費者は、グリーンウォッシュの定義や歴史、種類や特徴、問題点や影響などについて知識を深めることが必要です。また、消費者は、グリーンウォッシュの事例や訴訟などについても情報収集することが必要です。これらの知識や情報は、消費者が自分の購買行動に対してより批判的かつ意識的になることに役立ちます。
5. サステナブルなファッションを実践する方法
グリーンウォッシュに騙されないためには、サステナブルなファッションを実践する方法を知ることも重要です。サステナブルなファッションとは、環境や社会に配慮したファッションのことで、以下のような方法で実践することができます。
5.1 購入前に必要性や着回し性を考えること
サステナブルなファッションの第一歩は、購入前に必要性や着回し性を考えることです。消費者は、自分のクローゼットにある服と合わせられるかどうか、自分のライフスタイルに合っているかどうか、長く着られるかどうかなどを確認することが必要です。また、消費者は、自分が購入しようとしている服がどのように作られているか、どのような素材や工程が使われているか、どのような環境や社会的影響があるかなどを調べることも必要です。これらのことを考えることで、消費者は自分の購買行動が環境や社会に与える影響を把握し、より意識的な選択ができるようになります。
5.2 購入後に服の手入れや修理をすること
サステナブルなファッションの第二歩は、購入後に服の手入れや修理をすることです。消費者は、自分が購入した服を大切に扱い、長く着られるように努めることが必要です。例えば、消費者は、服の洗濯や乾燥方法を確認し、適切な方法で行うことが必要です。また、消費者は、服に汚れや傷がついた場合は、自分で洗ったり縫ったりするか、専門店に持って行って修理してもらうことが必要です。これらのことを行うことで、消費者は服の寿命を延ばし、廃棄量を減らすことができます。
5.3 購入しないでレンタルやシェアを利用すること
サステナブルなファッションの第三歩は、購入しないでレンタルやシェアを利用することです。消費者は、自分が必要としない服やアクセサリーを購入する代わりに、レンタルやシェアサービスを利用することができます。例えば、消費者は、特別なイベントや旅行などで一時的に使う服やアクセサリーをレンタルすることができます。また、消費者は、自分のクローゼットに眠っている服やアクセサリーをシェアサービスに登録し、他の人と貸し借りすることができます。これらのことを行うことで、消費者は服の使用効率を高め、新たな服の需要を減らすことができます。
5.4 購入した服を手放すときはリユースやリサイクルをすること
サステナブルなファッションの第四歩は、購入した服を手放すときはリユースやリサイクルをすることです。消費者は、自分が着なくなった服やアクセサリーをゴミとして捨てる代わりに、リユースやリサイクルに回すことができます。例えば、消費者は、自分が着なくなった服やアクセサリーをリサイクルショップやフリーマーケットに売ったり、寄付したりすることができます。また、消費者は、自分が着なくなった服やアクセサリーを回収ボックスや店舗に持って行って、リサイクル素材に再利用されるように依頼することができます。これらのことを行うことで、消費者は服の廃棄量を減らし、資源の循環を促進することができます。
6. まとめ
グリーンウォッシュは、ファッション業界において広く見られる現象です。グリーンウォッシュは、消費者や社会に対して様々な問題点と影響をもたらします。グリーンウォッシュに騙されないためには、グリーンウォッシュの定義や特徴、問題点や影響について学ぶことが必要です。また、グリーンウォッシュに騙されないためには、サステナブルなファッションを実践する方法を知ることも必要です。サステナブルなファッションとは、環境や社会に配慮したファッションのことで、購入前に必要性や着回し性を考えること、購入後に服の手入れや修理をすること、購入しないでレンタルやシェアを利用すること、購入した服を手放すときはリユースやリサイクルをすることなどがあります。これらの方法を実践することで、消費者は自分の購買行動が環境や社会に与える影響を把握し、より意識的な選択ができるようになります。
